幸福の木

ボクが昼間働いている会社のオフィスに幸福の木がある。もう何年も置かれて、正直もう捨てててもいいんじゃないか?と思ってたような木だ。そんなしょぼくれた、どうしようもない感じの木につぼみが付き始めた。なんだかブロッコリーみたいなつぼみ。しかしそのつぼみはいつまで経っても咲かない。けっこう長い間つぼみ生活が続いている。

そこで、会社の女の子が幸福の木について調べてきてくれた。どうやら幸福の木に咲く花は、夜にしか咲かないらしい。そうか、この花は誰もいないオフィスで、誰に見られることなく咲いているんだ。なんだか素敵な話だ。しかも幸福の木に花が咲くのは10年に1度だという。10年に1度の大舞台に、この木はひっそり咲いている。誰もいないオフィスでひっそりと。

なんかそういうものがあってもいいのではないか?ってちょっと思った。美しい花、しかも幸福の花で、しかもでしゃばらないで、品が良くて、もう花としては満点をあげてもいいような花なのに誰もいないところで咲いている。それはとっても残念なことのようにも思うけど、その神秘な世界が守られていることに価値を見出してもいいのではないかと思うのだ。みんなに認められたものだけが美しいわけではないんじゃないかな?認められないから価値が落ちるわけではないのではないかな?

音楽もいろんな場所で作られてる。きっとどこかにはとても素敵なメロディーが鳴り響いてる。ボクには届かないそのメロディーはきっと他の誰かには届いてる。その届いた人にとって大切なメロディーになればいいんじゃないかな?

この幸福の木に咲く花も誰かには届いてるはず。それは掃除のおばちゃんか。それとも向かいのビルのおじさんか。それともいつも淡い光を窓に届けるのんびり屋のお月様か。でも、必ず誰かに届いている。

そんなことを信じてもいいのではないですか?