中学生の恋と命

中学校の3年生の時、ある女の子を好きになった。その子はショートヘアでとても活発で明るくて、ちょいヤンキーくらいの感じで、とても可愛い子だった。もちろんみんなのアイドル。運動も勉強もルックスもしゃべりもすべて平均レベルの、何も取り柄のないその他大勢の僕とは、まったく釣り合いの取れない女の子だった。

好きにはなったけど、もちろん付き合うなんてことはなく。ただ中学校の卒業の時の寄せ書きに、「楽しかったね」みたいなことが書いてあった後に、「高校生になったら…」と書いてあった。この「…」を中学生の煩悩炸裂な僕は「高校生になったら迎えに来てってこと?」みたいに2%くらいだけ思っていた。そして僕らは違う高校へ進学した。

何を間違ったのか男子校に進んだ僕は、毎日女の子と一言も話すことなく毎日が進んでいた。高校には友達もほとんどいなかった。そんな状況では、中学校最後の恋心は塗り替えられることもなく、ずっとその女の子が好きなままだった。

一度高校一年の夏に近所でばったり会ったことがある。でも特に目立った会話をすることもなく、「久しぶりー」なんて二言三言喋っただけで終わった。とてもドキドキして、家まで自転車で全速力で帰った。

そして結局密かな恋心を抱いたまま2年生になった。そしてある日同窓会の誘いが来た。男子校の生徒にとって女子としゃべれる数少ないチャンス。そんなもの逃すわけがない。即出席の返事。僕は彼女に会えるのをとても楽しみにしていた。

そして同窓会当日、自分の中での最高のおしゃれをして会場に向かった。どんなファッションかは覚えてないけれど、きっと火が出るほど恥ずかしい恰好だったと思う。そして彼女の姿を探した。他の友達の会話も特に耳に入らなかった。でも、彼女はいなかった。必ずこういう場には出席する子だったのに。他の女の子にそれとなく彼女のことを聴いてみた。すると答えは意外なものだった。彼女は入院していた。

病名は白血病だった。彼女の両親のどちらかが被爆者で、その影響で白血病になってしまったとのことだった。僕はすぐに友達とお見舞いに行った。そこには治療の影響で髪の毛の無い彼女がいた。何も想像できてなかった僕に、笑いながら「びっくりしたよね、こんな姿だもんね」と彼女は言った。僕はそんな状況でも久しぶりに彼女と話せてうれしかった。ショックと喜びが両手に抱えきれないほど乗っかった。

白血病という病を前にして、高校二年生の僕にできることは何もなかった。そもそも彼氏でもない。卒業してまったく会ってなかった元クラスメイトだ。ただのクラスメイトだ。そして1ヵ月後、彼女は亡くなった。僕らが最後の友達のお見舞いだったそうだ。

僕は結局彼女に気持ちを伝えることはできなかった。あまりにも急で、あまりにも想定外の出来事は、僕の心にぽっかりと大きな穴を開けた。そして悲しみよりもわけのわからないものを僕に残した。それがなんなのかは今もわかっていない。ただ彼女のことは絶対に忘れない。それだけは間違いない。

それ以来、僕は人を好きになったら必ず告白している。といっても二人しかいないけど。それも前の嫁と今の嫁。どっちも結婚してる。なんていう高確率。これも彼女のおかげなんだろうか?

そしてその後、僕はよく人の死に遭遇してる。告白されて付き合った彼女や、いとこも二人亡くなった。そして小学校から一緒の親友はガンで21歳の時に亡くなった。義理の兄も。ほとんどが20代前半の出来事だった。それからはある意味人が死ぬことに慣れて、人が死ぬことを当然と思って生きているところがある。まあ本当の意味で慣れるわけなんてないけど。

うちの両親もそろそろいい年だ。僕の年齢ではそろそろ覚悟をしなきゃいけない。うちの父親は今月で80歳になる。人の死に抗うことはできない。でも生きている間にたくさんの思い出を作ることはできる。できるだけ実家に帰るようにしなきゃな、もうそういう年齢だ。たおを連れて帰るのが一番の親孝行。

たおの寝顔を見ていたら、そんなことを考えてしまった。