「THE PIER」/くるり

日本屈指のポップとオルタナの綱渡りを続けるバンド、くるりの新作。くるりは元々たくさんの音楽を吸収して吐き出すことを繰り返してきましたが、このアルバムでその作業が見事に結実した気がします。くるりとは?という問いに答えたようなアルバムだと思う。

くるりが良い時というのは、(自分的に)未開の音楽に興奮しながらも、くるりのフィールド、自分の土俵にその音楽を引き込んだ時。乾いたR&Rだったり、エレクトロニカや音頭などは見事に吸収してた。でも相手がでかすぎると、特にクラシックに熱狂してる時は、最初はその熱狂がくるり流のロックンロールと結びついていたけど、途中からクラシックのでかさに飲み込まれてしまった時もあった気がします。そうなるとポップでもなくなって微妙な感じが強くなって。でも今はそのクラシックも完全に消化して、さらに東方やアラビアの音楽なんかもうまく「くるりの箱」に収めることが出来るようになってる。だからこのアルバムはすごく色んな音楽が混ぜ込んであるけれどとてもポップ。くるりはポップじゃないといやだな。

そして特筆すべきは音の良さ。ギターの鳴り、ドラムの鳴り、様々な音の鳴りが素晴らしい。今はデジタルに録音する時代になって、アナログの時代のように音がにじまなくなった。すると音数を減らさなきゃいけない。うまく混ざってくれないから。飽和しないというか。コーネリアスの音楽はその好例。音数少なくとてもシンプル。でもくるりはそんな中でたくさんの楽器を詰め込みながら、でもにじむ必要のない、分離のはっきりした、その音がそこにある意図のはっきりした音を作ってる。意味のない楽器がまったくない音楽。僕は意味のない聞こえない音がある音楽も好きな人なんだけど、今の録音機器ではそれは難しくなってきた。そこをしっかり理解した音作り。やっぱりくるりは日本最高峰。屈指のバンドだと思う。

くるりを聴くといつもとてもやる気が出ます。日本にくるりがいてよかったな。まあでもこの次が大変なアルバムだよね。