「Chasing Yesterday」/Noel Gallagher's High Flying Birds


音楽と言うのは、結局メロディーとリズム、そして音色なわけです。その中で音色は玄人好みの世界に入りがちだし、リズムは派手にリズムを組み立てるものは別にして、細かいリズムの違いは耳の超えた人以外は判断しにくい。グルーヴが違う!とかね。そんな中、どんな人にでもはっきりと違いが分かり、心地よさの源泉と言っても良いものがメロディー。ポップミュージック、大衆音楽というものは、結局これが書けるかどうか、これを生み出せる人材を用意しているかに成否がかかっていると言っても過言ではない。

そんな中で、メロディーに鬼のような才能を宿し、シンプルなコード、シンプルなリズムで名曲をポコポコ生み出すのがこのノエルギャラガー。所謂兄オアシス。オアシスではバンドのエンジンとしてフル稼働、R&Rの側面は弟オアシスのリアムが担っていたので(声とイメージだけですけど)、それ以外はほぼすべてノエルが掌握。ただアレンジやギタリストとしては、まあ平均点の人で。だからいつだってオアシスは名曲をただコードをかき鳴らすだけのアレンジでやってきた。プロデューサーがストリングスを施したとしても。でもそれでよかった。歪み過ぎなギターと無駄なアウトロは残念だったけど、メロディーがスペシャルだったから。

そしてソロになったお兄ちゃんにロックバンドであることは必要なくなり、良いメロディーを、それを邪魔しないシンプルなアレンジで、そして過剰さのないまっすぐなノエルの歌で演奏するようになった。するとさらにメロディーは浮かびあがる。本当にこの人のメロディーは魔法だと思う。

そしてソロになって浮かび上がったのは、この人は音楽愛だけで生きているんだなってこと。オアシスの曲もソロの曲も自分の生まれた大切な曲という点で一緒で。平熱でただ淡々と良い曲を作りだし、演奏していく。この人にとって音楽は息をするような自然なものなんだろうなぁ。まあ自分を一緒にするのはなんですけど、いつも頭の中で次の曲を考えている僕としてはめちゃめちゃシンパシーを感じる。こんな感じで歩くように音楽を生み出して行きたいなぁーなんて思うのでした。まあそれが許されるのはノエルみたいな人だけなのかもしれないけど。

当たり前のように名曲が並ぶ当たり前のような良いアルバム。僕は1枚目よりこっちの方が好きかな。サックスとか入るの良いよね。