「Pale/みずいろの時代」/山田稔明

ゴメス・ザ・ヒットマンの山田君のニューアルバム。

相変わらずのエバーグリーンなメロディーと少年性を微塵も失わない声。きれいなものだけで出来ているような手作りの音楽。いつだって期待を裏切らない山田君の刻印が押された音楽がここにある。
今回のアルバムはイメージが「みずいろ」ということで、特にアルバム序盤、水面に少しだけ水を垂らして広がった波紋のような、なんとも静かな世界が広がる。サウンドアレンジ的にも、今までのどちらかといえばオーソドックスなアレンジから、ちょっとサイケデリックな、静かにみずいろが解けて行くような世界へ。少し夢を見てるような気分。

そしてその世界は英語詩の「スミス」くらいから目を覚まし、外へ出て、波打ち際を走る躍動感を見せ始める。夢見るだけで終わらないところに、タフなポップを奏でる山田君の意志の強さが見える。そして意外にも、このアルバムはそのギアをあげたまま、むしろスピードを上げて行きそのスピード感のまま終わりを迎える。そう、このアルバムは実は外に出て行くアルバム。みずいろと聞くと内省的な世界を想像してたけれど、とてもポジティブで、前向きな一枚なのです。

山田君は今、きっちり外に出て行く意思、わかるやつだけわかればいいではなく、ちゃんと自分の音楽を届ける意思を持っているんだなぁーと感じる。そんなこのアルバムを、僕は少し眩しく、羨ましく感じます。同世代が頑張っている姿は、刺激になるね。良いアルバム。