「F-A-R」/沖野俊太郎


遅ればせながら沖野さんの新作を。なんとPAVELのミッキーがドラムで参加!共同プロデュースにプレクトラムのたいちゃん!あのヴィーナスペーターの沖野さんがいつの間にか身近に思えるなんて、まったく信じられん。

大人のマッドチェスターというのはこういうアルバムなんだなぁーというのが聞き始めの印象。ノエルのアルバムもそうだけど、サックスが自然に入ってくるのって大人だなぁーって思います。それがいやらしくなく鳴ってる音楽は本当にかっこいい。

しかし、聞き進めて行くと、徐々に本当の顔が現れる。このアルバムの本当の色は同じマンチェスターでもジョイ・ディヴィジョンニューオーダー流れのポストパンク感のある冷たい感触の切れ味。沖野さんのジェントルな声で荒れた感じにはなりませんが、けっこうな攻め具合。緊張感は絶対に途切れさせない。

僕は今の世代にとってのAORってのがあると思っていて、ソニックユースやストーンローゼスを聞いてきた世代だからこその大人の音楽。ただアダルトに、洒落た感じになるのではなく、どこか荒れた音楽で、でも大人を感じさせるもの。そういうのがもっと日本にも欲しいと思ってました。これはまさにそんな音楽の真打。大人が聴いて、子供が憧れる音楽。これからのAORはこれが基準になって良いと思う。「A」はアダルトであり、オルタナティブであるAOR。傑作ですな。