「強欲な僕のブルース」

僕のデビュー曲は「SING MY SONG〜強欲な僕のブルース」っていう曲なんですが、あれが出来た瞬間をよく覚えてます。

まだ1回目の結婚をしている時で、高田馬場のアパートに住んでました。24歳かな。でも、音楽で身を立てるのは難しいかもしれないと思い始めていて、嫁の実家に一緒に暮らす方向で話が進んでました。要するにマスオさんです。あ、前の嫁の話ですからね。そして実際に福岡でマスオさんをやるわけですが、その前の頃の話。

精神的には敗北感しかない頃です。まあ誰も音楽を聴いてくれないし(実際にはライブもやってないから、誰にも聞かせてないわけですが・・・)、逃げ道は何もなしという感じ。マスオさんなんて喜んでやらないですよ。でも僕の前に見えてる道はそこしかなくて。見るに見かねてお父さんが助け船を出してくれたわけで、僕はそれにすがるしかないのか・・・と途方に暮れていました。


「足りない何かが わからない何かが くだらないなさけない時は巡り 巡ってまた戻る」


こんな歌いだしは、僕のその時の思いそのままでした。とにかく自分がなさけなくて。何も出来ない頃。パン屋さんでパンを落としてしまって、それを黙って置いて逃げ帰ったことがあります。そこで謝るなりすればいいのに、逃げて帰った社会不適合者。それを見ていたOLさんが僕に指を指して店員さんに何かを言っている姿を覚えてます。僕はそこから走って逃げました。今あの頃の自分に会ったら、たぶん見放してると思う。そのくらいどうしようもない頃。


「行き止まり立ち止まり何度も繰り返す いつも通りあふれかえりアブラハムの歌」


そしてサビの歌いだし。それでもどこかで抵抗しようとする自分がいました。アブラハムの歌は、結局自分も誰かと同じことをしなきゃいけないのか・・・という苛立ちの象徴。「アブラハムには7人の子♪」っていうあの歌ですね。自分らしさが何かもわかってないのに、自分とは何かばかり考えるモラトリアムな自分。でもとにかく抗う自分をここに閉じ込めたかったんだと思う。


「儚い命の しがない僕らが 譲らない渡さない何もかもを 強欲な僕のブルース」


そして最後のフレーズはこれ。それでも譲りたくない。最後の一線を越えたくない。負けたくない。諦めたくない。そんな祈りのフレーズ。

僕はこの曲が出来た時に初めて自分らしい曲が出来たと思いました。そこに描かれているのはプライドばかり高くて、何も出来ない自分。でもそれでもあきらめない無様な自分。あぁ、俺って無様なんだなぁーって納得した瞬間でした。そしてここから、曲を書くということが、自分とシンクロします。音楽が自分の中に入った瞬間。

そして僕はこの曲をマスオさんしながら、嫁の実家の屋根裏部屋で完成させます。屋根裏部屋に籠るマスオさん。どうしようもない旦那だと思っただろうなぁ。しかしそれをレコード会社のディレクター宛に送ると、何社かのレコード会社から連絡が来て、数年後、デビューすることになります。

僕はこの決意表明のような歌でデビューするわけですが、デビュー曲には地味すぎて、ミュージシャンとしては失敗作でした。でもこれでデビューしないと、今の自分はなかったと思ってます。自分の原点。情けない無様な自分がそのまま表現出来た曲。でも絶対にあきらめない自分がそこにいる曲。そしてこの地続きに今もいます。何も諦めない自分がそこにいます。滑稽なくらい諦めない。それは音楽だけじゃなく、幸せな家庭も諦めない。立派なお父さんも諦めない。すべてを諦めない。僕の人生は「強欲なブルース」なんです。

今日も朝からたおのご飯を作って食べさせて良きお父さんをやり、そして曲を作って作曲家をやり、夜にはシンガーソングライターとして、自分の表現を行います。僕は諦めない。何も諦めない。

そんな歌を聴きたい人は、ぜひ今夜渋谷の喫茶スマイルへ。何かは伝えられるかと思います。そして音楽が鳴りやんだら、色んな話をしましょう。音楽だけじゃなくね。

あ、ちなみに今日はデビュー曲は歌いません(笑)今はもっと歌いたい曲が他にもあるのよ。すいませんね、面倒な人で。

3/6(月)渋谷喫茶SMiLE
出演
エガワヒロシ
The VOUT
Open19:00 start19:30 1500円+1D
僕の出番は20時20分です。