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明日は僕ら夫婦の結婚記念日です。正確には入籍記念日。まず2人で住むことを決め、一緒に住むならと籍を入れることにしたのが13年前の明日。結婚式はその半年後の3月5日。一緒に住んだ家から結婚式の打ち合わせへ、すぐ近くにの新宿のホテルまで仲良く自転車に乗って行ったのが良い思い出です。

もう何回も話してるけれど、僕が結婚の許可をもらいに嫁の実家に行った時の話。もう6年も付き合っており、ミュージシャンであることで反対されたり、バツイチであることでの大反対を乗り越えて踏み入れた嫁の(その当時は彼女の)実家。流石に6年も幸せそうな顔をしている娘を見て、ご両親は安心したのか結婚には反対の気配はなく、玄関には「待ってましたよ」の言葉と共にお母さんが出てきました。

そしてリビングで談笑の中、僕は話を切り出します。
「今日は結婚の話をさせてもらいたくて、こちらに伺いました」
と言うとお父さんが言葉を挟みます。
「結婚はこちらも賛成です。仲良く、楽しく2人で暮らしてもらえたらと思います。でも、ひとつだけ約束して下さい」
と、お父さんが言います。僕は覚悟してました。音楽をやめろと言われることを。まあ全ての楽器を捨ててやめるつもりはなくても、仕事に支障のない範囲に音楽を納めなくてはいけないとは思ってました。少なくとも結婚の話をする時は、変な音楽の野心は出すまいと心に誓ってました。しかし話は全く違ってました。
「江川君の音楽は妻から貰って聴いてます。その音楽についてひとつだけ約束して欲しい。せっかくこれだけの音楽を作れてるんだから、うちの娘の為に、うちの娘を理由に音楽をやめることだけはしないで欲しい」
僕はあまりの予想外の言葉にキョトンとします。あまりの優しく温かい言葉にこれが現実の話なのか分からず、うまく反応できませんでした。そして言葉の意味を理解するにつれて、お父さんの心の広さに圧倒されます。胸の奥の方が熱くなったのを覚えてます。
「自分も好きなことをして生きてきた。江川君もこれだけ好きなことがあるんだから、諦めないで続けて欲しい」
そんな言葉を受け、僕は結婚を通してこのお父さんの息子になります。もう一つ幸せな家族が出来た瞬間。あれからもう13年。早いような長いような。

明日も一輪車の練習があったりと普通の一日。夜は家族でご飯を食べに行くくらいかな。

毎回この話を思い出すと、お父さんの気持ちに応えられるよう、僕はもっと素晴らしい音楽を作らなきゃいけない、結果を残さなきゃいけないと身が引き締まります。まあ嫁とたおの笑顔の隣でなければいけないけれど。