awake

 

 


the  MADRASが「awake」というアルバムをリリースした。チューインガムウィークエンドでの活動を止め、そして音楽自体も止めてしまった橋本孝志という稀有な蒼さを持つソングライターにしてシンガーが、心を通わせるメンバーと出会い「目覚める」までのストーリー。そんな風に勝手に感じてしまうエモーショナルなアルバム。

 


是非このアルバムを聴きながら街中を歩くことをお勧めする。このアルバムは景色の中に自分を浮かび上がらせ、いつもの世界を特別なストーリーに仕立ててくれる。まるで自分が映画の中の主人公になったように、いつもの景色がフィルムに収められたような色彩に変わっていく。でも、そのマジックは本当じゃない。本当は最初からそんな色彩で僕達の物語は進んでいる。等身大のストーリーがきらめいていないなんて誰が言った?そんな僕らが見ないようになってしまった小さな光を、the  MADRASは丹念に拾い集める。

 


橋本さんの震えるウサギのような蒼さが際立つボーカル。それを支えるバンドは無駄なもの、いらないものを拒絶する。

必要なコードのかけらを拾い集め、美しいものに次々と変えていく魔法のような木下君のギター。一太刀で必要な曲線を削り出す美しきえらちゃんのベース。そして必要な言葉を、丁寧に手紙に書くように真っ直ぐに響かせるリコ君のドラム。どの音にも嘘がない。不器用で正直者なメロディーと歌詞を包むような、これ以上なく真鍮な音。雑然とした世界から、蒼さをくり抜いたような音楽。それがthe  MADRAS

 


大切なことを丁寧に描く。それだけでこんな素敵な音楽になることを改めて教えてもらった。そしてそれは音楽の真理だと思う。

 


天才ではない真っ直ぐな人が作った美しい音楽。それはこんがらがったブルーな世界に生きる、僕らのための協奏曲。はぐれてしまった孤独なエイリアンは、この音楽が鳴っている間だけひとりぼっちじゃなくなる。だからこのアルバムの音は必要な人に届けなきゃいけない。滲むオレンジを見つめる、全ての街のルーザー達へ。

 


北海道の音楽の特別なところ。BE MODERNから連なる、ブッチャーズの吉村さん、イースタンユースサカナクションまでに続く、ポップなのに切ない音楽。橋本さんはその系譜の人。歌謡性とヒリヒリした感触が同居する北海道マジック。またもここに表出しました、北海道は興味深い。