敏感

 

 


とても眠い。とにかく眠い。でも目を閉じると今考えるべきことが頭に浮かび、僕の瞼は頑なに閉じることを拒む。それは音楽のことだったり、一輪車のことだったり、明日の弁当のことだったり。頭に浮かぶことは大したことではなかったりする。

 


眠るのが嫌いなわけではない。時間が無い!と常に思っているけれど、眠る時間はなるべく削りたく無い。眠っている時間は至福であり、何ものにも代え難い快楽がある。でも体が、いや脳が眠りを拒否する。

 


何かを作る人は敏感な所がないといけない。その敏感な場所で世の中の流れ、人と人の間に行き交うもの、大切な何かを感じ取る。それが無ければ味気ないものしか作れない。テクニックがいくらあっても、それがなければ良い作品は生まれない。

 


でもその敏感というのは無防備と同義語であり、その敏感な場所は弱点だったりする。恐れや痛み、戸惑いや躊躇がその場所からスーッと入り込む。その入り込んだものはジワジワと体に浸透していき、いつしか放心状態へと誘導する。そして人としての機能が失われる。そんな極北まで行かなくても、どうにも落ち着かない状態になる。それはきっと何かが入り込んでいるせいだ。

 


入り込んだものは作品として放出するしかない。それ以外に方法はない。スポーツしたって発散されないし、大好きな人とキスしても霧のように消えていかない。あの人に抱きしめられても震えが止まるだけ、あの人のかかとの匂いを嗅いでも事態は解決なんかしない。

 


そんな敏感な場所がある人は、ずっと何かを作り続けなきゃいけない。それは幸せな家庭があっても、天涯孤独でも、世界が平和でも、世界の終わりでも変わらない。その場所を閉じたら楽になるけれど、作品は作れなくなる。それならどっちを取る?どっちが幸せ?その答えは誰も知らない。

 


苦しかったら音楽作れ。楽しかったら音楽作れ。僕はそうやって生き延びてきた。みんなそれぞれ何か方法があるんだろうけど、僕にはそれしかない。そしてまた音楽が頭の中で鳴り出し、僕は眠れなくなる。

 


今日の夜はぐっすり眠れるはず。そんな夜が2日続いたら非常事態。今日一日なんとか頑張ろう。おー。