一輪車人生第2章

 

 


小学生になってから始めた一輪車。たおはもうとにかく夢中で、今年は何とか全国大会出場まで辿り着きました。でもまだまだ上手くなりたい。世界一になりたい。そんな気持ちが止まりません。

 


たおのいるチームはどちらかと言えば、大会に勝つよりも、みんなで楽しく一輪車を続ける事に重点を置いたチームです。とてもアットホームで、色んな境遇の人達が集える場所としても機能しています。とても素晴らしいチームです。

でもそんな中で、たおの闇雲なまでの野心というのはなかなかうまく収まりません。チームの理念とたおの気持ちに齟齬が出てきている。そんな事を感じていました。

 


そんな気持ちが抱えきれないくらいになった頃、たおに問いかけます。

「もしたおが本気でやりたいなら、チームを移籍しても良いよ。たおに合うチームを探してあげるよ」

そんな問いかけの答えはとてもストレートでした。

「うん。移る。いつから行ける?」

 


たおはチームのみんなと仲良しです。チームの事も本当に好きです。そんなたおなので少しは躊躇するかと思っていました。思い悩むものだと。でもたおは即断しました。たおは本当に強い。そんな風に感じてました。

 


そして色んなチームの練習に参加して、5年前に世界大会で優勝しているチームに入る事になりました。そのチームではたおは最年少。とてつもなく上手いお姉さん達に囲まれ、ガムシャラに上を目指す日々が始まります。

 


そして今日。今のチームで、移籍を発表しました。たおが移籍する事を応援してくれる子、涙ながらに何でいなくなっちゃうのか聞いてくる子。色んな反応がありました。

たおはお父さんとみんなの前に立ちます。まずお父さんから経緯を説明しました。そしてたおに挨拶をさせます。

 


「2年半、ありがとうございました

…」

 


そう言ってから、たおは言葉に詰まります。スピーチは得意な人です。人前に出るのは苦手ではありません。そんなたおが言葉に詰まり、お父さんを見つめます。そして最後には声をあげて泣き出してしまいました。大きな声をあげて泣きました。わんわん泣きました。その時に気付きました。あぁ、たおは簡単に決めた訳じゃないんだなぁ。色んな葛藤があって、上手くなりたい気持ちと、チームへの愛情、仲間との友情、色んな気持ちがぐちゃぐちゃになりながら悩んで、苦しんで決めたんだ。そんな事がその涙から伝わってきました。この子はそれでも一輪車が上手くなることを選んだんだ。涙を流してもやると決めたんだ。僕の胸に顔を埋めて泣くたおを見つめながら、そんな気持ちを受け止めていました。

 


泣き顔を見られるのが本当に嫌いなたおは、しばらく見えない場所で泣いていました。沢山声をかけて、たおの気持ちを沈めました。そして涙が止まると。たおはすぐに立ち上がり、また練習を始めます。黙々と。出来ていない技を出来るようになる為に、何度も何度も同じ練習を繰り返します。今日帰ったら足はアザだらけでした。それがたおの決意なんだと理解しました。

 


同じ新宿区内のチームから、なんと日野市のチームに移籍します。距離は何倍だろう?お父さんお母さんにも苦難の道の始まりです。でも、子供が本気なら、それに親は応えなくてはいけません。子供が夢中になれる事を見つけたら、背中を押してあげるべきです。親の力が試される時が来ました。やるしかないだろ。それが今の気持ちです。正直しんどいけれど。

 


ついに来月から我が家の新しい生活が始まります。音楽での新しいプロジェクトも始まるし、今は人生の転換時期なのかもしれません。

 


たお、頑張れよ。お父さんも頑張るわ。