整わない

 

 

 

 

この間、嫁とスーパー銭湯に行った。嫁と行っても一緒に入れるわけではないのだけど、2人で銭湯に行くのは夫婦関係が良い証拠だ。2人で昼からホルモン食って風呂。

 

 

 

そこには今静かなブームを迎えてるサウナがあった。方々で整いまくる友達が何人かいる。でも僕はこれが苦手で。でも信頼できる友達があんなに夢中になっているのには何かあるはずだ。苦手なものを乗り越えて大好きになる事もある。人生は挑戦だ。トライして、負けて得るものだってある。僕はサウナの扉に手をかけた。

 

 

 

暑い…。がむしゃらに暑い。座ると尻を火傷しそうなくらい熱い。常連さんはそれ専用のタオルを敷いていた。あ、そんなものあるのか。知らなかった。でももう外には戻れない。今外に行ったら、もう一回扉を開ける心の強さは自分にはない。挑戦する男は、空虚な瞳でよくわからないバラエティ番組を見つめるのだった。

 

 

 

3分が過ぎた。正直もう飛び出したい。暑い。でも長く入ってから水風呂が流儀のはずだ。3分じゃ整うはずがない。カップラーメンしか作れない。どん兵衛だったらまだ麺固めだ。我慢我慢。

 

 

 

5分が過ぎた。いつもならここでギブアップだ。5分という時間のちょうど良さが心を緩ませる。でも今日は挑戦の心が燃えている。まだまだ。心を奮い立たせ、お尻を焼き散らし、日テレのバラエティを見ていた。どんな番組だったかは覚えてない。

 

 

 

新記録の8分を迎えた。本当は10分まで行こうと思っていた。でも僕の中の根性無しがもういいんじゃない?と呟き、僕はそれに従った。この負け犬めが。心はそう叫んでいたけれど、身体はもうサウナの外に出ていた。

 

 

 

そして水風呂だ。ここに入らなきゃいけない。いきなりドボンと頭まで入る猛者がいる。倒れ込んで水しぶきを上げる輩まで。そんな中そっと足を入れた。

 

 

 

つ、冷たい…。これは無理かもしれん!あまりの冷たさに泣き言を漏らす。おしっこは漏らしてない。しかし本当に声を漏らして隣のおじさんがニヤリと笑った。それでもなんとか水風呂に足を踏み入れた。

 

 

 

いやしかしこれで肩までつかる?信じられない。これで何かが整うとか信じられない。もしかして、これはただのマゾヒズムなのでは?そんな疑念ばかりが浮かぶ。SかMかと言われたらMだなと即答出来る自分だが、これには性的興奮も覚えない。俺が好きなのは言葉責めだけだ。痛いのとかは無理。

 

 

 

それでも挑戦の心が、初めて腰まで浸かる地平へと押し切った。しかし、その先が難しい。その先に整う世界があるはず。それはわかっているが、どうしても踏み出せない。この意気地なし!心の中の南ちゃんに罵倒される。あぁ、ごめんなさい。僕は意気地なしです。育児はしてるけど意気地なしです。南ちゃんに怒られる自分が頭に浮かぶ。あふ。結局、水風呂の冷たさには全く勝てず、今回も整う事なくサウナから撤退するのでした…。敗者、エガワヒロシ

 

 

 

露天風呂に入り、太陽を浴びながら椅子に座って戦いを振り返る。やっぱり自分にサウナは一生無理な気がする。整う事など永遠に訪れない気がする。ヒャダインとは違うんだ。自分は。そっちの作曲家ではないんだ。太陽はとても眩しく自分を照らし続けていた。

 

 

 

そういえば、お風呂で何人もお尻に赤い丸い紋章のようなものがある人を見た。あれは何だろう?組織に属してる証?囚われているものに焼き付けられた焼印?その人達は誰もサウナに入ってなかった。あれは整わない人間の証明なのかもしれない。いずれ自分のお尻にも現れるのだろうか?それともどこかで焼き付けられるのか?恐ろしい世界…。