スポットライトが当たる時

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僕は小学生の時にサッカー少年団に入っていた。今ではサッカー解説の仕事をした事があるくらい大好きなスポーツだけど、その時は特にサッカーに愛情はなく。兄がやっていたチームに押し込まれた。それが僕がサッカーを始めた理由だった。

 

 

 

僕は埼玉の浦和生まれなので、サッカーが盛んな土地だった。なので運動神経の良い奴がそのチームには集まっていた。そんな中で凡庸な運動神経の僕は、ABCとあるチームのBチームのキャプテンという、微妙な立ち位置でチームに所属していた。ポジションも1-3-3-3の布陣で3バックの後ろに控えるスイーパーか、中盤3枚の左が僕のポジションだった。小学生の時に上手い奴は攻撃のポジションをやる。その意味で僕の担当するポジションは地味極まりないものだったと言える。まあ何をやっても中途半端な所がサッカーにも現れていた。

 

 

 

しかしある日、急に活躍をした日があった。その日は左MFで、調子も良く、何故か動きも軽かった。そしていつもは中途半端な位置に終始するポジション取りが、この日は妙に積極的で、ゴール前にスルスルと入っていく。そして絶好のポジションにいた僕にパスが来た。僕はとても冷静で、キーパーの脇を狙い右足を振り抜いた。ボールはゴールに吸い込まれ、僕はゴールを挙げた。そのゴールでチームは同点に追い付き、試合はドローとなった。

 

 

 

あの瞬間、僕は自分にスポットライトが当たったように感じていた。ビンスポットが真っ直ぐ僕だけを照らしているような。そんな瞬間。サッカーの上手い人はこんなシーンを何度も経験してしてるんだなぁ。そんな風に思った。でも、僕がそんなシーンに登場したのはその時だけだった。小学生の間で一回だけ。あげたゴールも1ゴール。僕にサッカーが向いてないのは間違い無かった。

 

 

 

そしてその活躍した試合にはおまけのエピソードがある。その日やけに調子が良かった僕は、そのドロー試合の結果を決めるPK戦にて、キッカーに指名される。いつもはそんなものに選ばれる事のない、技術も度胸もないヒロシ少年が。この日の勢いならいけるだろ?そう監督は考えた。

しかし、ヒロシ少年に当たったスポットライトはもうどこにもなかった。ただの暗がりに立つ地味な少年に戻っていた。極度の緊張に見舞われた少年の蹴ったボールはボテボテと転がり、その力のないボールをキーパーは難なくキャッチした。そして僕らのチームは敗退した。

 

 

 

地味で素朴な僕の小学校時代、スポットライトはいつも誰かを照らしていた。僕にスポットライトが当たるなんて、想像もできなかった。それが僕の少年時代。

しかし、高校生になり、バンドを始め、ステージに立つと、必然的にボーカルの僕にはスポットライトが当たった。そして僕は何かを勘違いして、音楽の道に進んだ。そして音楽こそが僕の生きる道となった。

 

 

 

人にはどこかのタイミングで必ずスポットライトが当たる時が来る。その時にその気になるかどうか。人生を決めるのはただそれだけなのかもしれない。でも調子に乗った後、その結果がどうなるのかは誰にもわからない。スポットライトは魔物。光あるところに影あり。僕は今光の側?影の側?それも誰にもわからない。