「DAYDREAMER」/the MADRAS


2年の活動を経て、ついにリリースされるthe MADRASの1stシングル。

伝説のバンド、チューインガムウィークエンドの橋本さんが立ち上げた新バンド。すべての曲が夏の終わりの陽炎のような、追いかけたら消えてしまうような儚さがある。それは歌詞にも顕著で、どの曲も負け犬側の、人生が上手く転がって行かない日々が記されている。でもそんな日々に向ける目は優しく、悴んだ手をそっと包むような感触があるのが嬉しい。そんな少し後ろ向きにさえ感じるメロディーと歌詞を、ポジティブに変えるのは若きバンドの演奏。この反転する力がこのバンドの魅力だと思う。ポールトーマスアンダーソンの名作「マグノリア」や「ブギーナイツ」のエンディングのように、少しだけ上向く世界。本当のポジティブというのはこういうさり気ないものなんじゃないかな。

そしてひとつ。サイケデリックに逃げない演奏が心地良い。これって最近のバンドでは珍しいよね。現在形のロックンロールバンドってこういうことなんじゃないかな。