ふわふわ

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昨日は一日中、本を読んでいた。本を読むといっても読書を楽しむとかではなく、仕事のために読んで、必要なところを抜粋する作業。まあなかなかに読み進まない。それでも音楽に関する事だから、それほど苦行ではないかな。


久しぶりに日中をリビングで過ごしたのだけど(普段はほとんど薄暗いスタジオ部屋から出て来ない)、本を読みながら聴きたい音楽をかけて、飽きたら坂本龍一さんのテレビのインタビューなど見て、何というか、完全にクリエイティブ側の空気でリビングを満たした。普段は生活の場でしかないこの場所をそんな空気にすると、ずっとこっち側の世界にいれば、もっと良い音楽が作れるのかな?と考えてしまった。


ミュージシャンが音楽の事だけを考えて暮らすこと。それが正しいと考える人はいるだろう。音楽に人生を捧げるんだ。それ以外の人間が作る音楽には意味がない。そんな声を、そんな考えを持つ人は結構いる。音楽を作る奴が幸せになんてなっちゃいけない。そんな事を言う人もいる。ふむ。何だか生贄みたいに聞こえるけれど、それも一理はある。


でも、あんまりそういう考えで、音楽以外に目を向けない人の音楽って、意外と息苦しくて疲れちゃう事が多い。凄い押し付けられてる感じがして、そこにハマった人には最高なんだろうけど、ちょっとズレてると、呼吸をさせて下さい!って気がしちゃう。


音楽が音楽だけで出来てるならそれで良い。でも、音楽というアートフォームはそんな簡単なものではない。そこに込めた、音楽とは関係ない想いが重要な事もあるし、音が何を表してるのかを考える時、音楽から離れないといけない時もある。


結局、音楽って総合格闘技だなと思うんです。いや戦わなくてもいいんだけど、とにかく総力戦。音楽以外にも生きて、その経験を音楽にぶち込む。そんな姿勢が音楽家には必要なんだと思う。だから、音楽以外にもぶつかって、傷ついて、血を流し、笑って踊ってのたうち回る。そんな人の音楽はやっぱり面白い。


音楽以外の事をしてる時に、罪悪感を感じるなんて多分間違ってる。というか、どんなことをしてたって、何をしてたって、音楽が頭から、心から離れる事なんてない。それが音楽家。音楽に集中しないと!なんて考えてる人は、まだ音楽が体に馴染んでないんだ。全てが音楽に繋がり、全ては音楽に滲み出る。それが当たり前にならないと、音楽は振り向いてくれない。


今日のリビングは、昨日とは変わっていつものリビングだった。でも、それで良いんだなって思った。原理主義は好きじゃない。ふわふわしてるくらいがちょうど良い。