負けてからが勝負

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歳を取ると、色んな人の人生を見る事になる。色んな人が悪戦苦闘、七転八倒、又は天下泰平の人生を歩むのを眺めていると、見えてくるものがある。それは人生は負けた後にこそ、その人が出るという事。そしてそれが面白いという事。


若い時は勝負に勝つ事だけを考えて、負けたら死ぬぐらいの感覚で色んな障壁に挑む。けどよっぽどの才能や実力に恵まれた人以外、大抵は負け戦にまみれ、泥水を舐める事になる。そして色んな人の話を聞くと、本当に面白いのは、その後どうやって立ち上がって、再び歩み始めるか。それが人生のハイライトと言っても良い。


自分の場合はメジャーデビュー後、契約が切れた時がそれに当たる。メジャーデビュー出来る人が少ない中で言えば、自分はその時点では勝利に値するのかもしれない。でもデビューはスタートでしかなく、その時点では何のゴールテープも切っていない。それを分かってないデビューに浮かれた自分は、見事にデビューのロイター板を踏み外す。急に人生は鋭角にカーブを切り、契約は切られ、お前はこれからどうやって生きていく?お前は何が出来る?と質問攻めに合う事になる。自分の場合は一旦サラリーマンになる事で人生の基板を立て直し、その後の人生の動きを確保した。それが今でも正解だったかはわからないし、もっと違う動き方はあったのかもしれない。でもそれを思いつく実力も才能もなかったし、後悔は特にない。


負けた後にこそ、その人の本質は表れる。勝ってる時、上手く行ってる時には、そんなものは覆い隠される。さらに言えば、負けるのを怖がって何も勝負をしないと、負けはしないけれど、経験値も積めず、結局は人生が地盤沈下する。勝負して負けた人には次の道も見えて来るけれど、何もしなければ下っていく道しか見えない。色んな人の人生を聞くと、そんな風に思う。高校受験から大学受験、もうその後のありとあらゆる勝負に負けて来た自分だけど、道はまだ塞がってないから、それなりに勝負はして来たのかもしれない。まだ人生の先は見えない。


ま、やってる事はずっと変わってないんだけどね。同じ所をずっと回ってるだけかもしれない。でもまた新しい勝負が始まるし、毎回のコンペも勝負以外の何ものでもない。相変わらず負け続けてるけれど、まだ道は塞がってない。ギブアップしなければ、全てに終わりなんてやって来ない。それはきっと強がりでもあるけど、本当でもあるんだ。そんな強がりと、負けず嫌いと、屁理屈のカクテルブルーズを真夜中に歌う。