サイレント

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京都こぼれ話。


京都の駅に着いた時の混雑具合には本当にびっくりした。大都会のTOKYO CITYに暮らしてるので、人が多い事にはびっくりしないのだけど、それでも駅の混雑具合は凄まじかった。勿論今回もバスは途中で乗れないくらい大混雑。オーバーツーリズムここに極まれり。


こんな状況なので、ホテルの価格は上昇しまくり。規定である程度の値段に収めなきゃいけないのだけど、全然収まらない。けど一つだけ泊まれる旅館を見つけた。もうあまり考えずに予約した。


そして日にちが近づき、どんな旅館だったかな?と調べると、トイレとお風呂が共同だった。お風呂共同も大浴場とかではなく、ただの家風呂に鍵がかかり、空いてる時間に入るシステムだった。そして口コミを調べるとさらに衝撃の事実。なんと、部屋の鍵がない!まいった。おかげでお風呂やトイレに行く時も財布を持っていかないといけない。でももうそこは腹を括る事にした。


当日、1日目を終えて旅館に向かう。思いっきり繁華街の中にその旅館はあった。見た目は意外にも小綺麗で悪くない。これは外国人なら喜ぶだろうなと思った。


そしてすいませんと入ると、どこからともなく旅館の人がやって来て「お待ちしてました」と言われる。靴箱などはないので、泊まってる人数分の靴がそこに並んでいた。靴を脱ぐと、そのままトイレとお風呂の場所を教えられ、部屋に案内される。これで旅館の人とのコンタクト終了!何もない!フロントもどこかもわからないし、電話もない!面食らったまま、薄暗い部屋に取り残された。名前や連絡先を記入する用紙はテーブルに置いてあった。お茶とお茶菓子もある。意外に清潔感はあるし、鍵がない以外は受け入れてる自分がいた。テレビは久々に14型。こんな小さかったっけ。


そして何よりびっくりしたのは、結構な人数が泊まっているし、部屋は襖で仕切られてるだけなのに、音がしない。全く。みんな静かに泊まっている。廊下を歩く時も抜き足差し足忍足。信じられないくらい静か。この静けさに、何故か京都を感じた。強制的に品を求められるような、そんな感覚。嫌とかじゃなく、これが京都の基準なのかもしれないなと感心した。経験のないくらいサイレントな世界。これ外国の人はたまげるだろうなぁ。一組白人のカップルが泊まっていたけれど、その2人もとても静かにしていた。京都の力は偉大だった。


鍵がないという事は、もういつ出て行っても良いということだった。翌日、朝早くに旅館を出た。一応お世話になりましたと声には出したけれど、旅館の人の気配はなかった。早朝で大きな声は出せなかったし。旅人は通り過ぎるだけ。そんな風情すら感じる旅館だった。


世界の中で有数の静けさを誇る日本だけれども、京都のそれは次元が違った。はんなりした空気が流れ、まるで時間が止まったようだった。あそこは別世界だ。とても静かな。