「foundation」/溝渕ケンイチロウ

DQSのドンにしてセロファンカスタネッツ、QUBE(再始動希望!!)等々豊富なキャリアを持つドラマーの溝渕ケンイチロウことケンさんが新作をドロップ。

もはやシンガーソングライターとしか呼べない存在に変わり、福山に拠点を移しても尚精力的に活動をする姿には、同い年の仲間として尊敬(と自分の尻を叩く焦り)しか感じないです。しかも今回はキャリアで交差してきた信頼できるメンバーにも演奏を依頼して、それを自分のドラム、アコギ、歌、そしてミックスとマスタリングでまとめるという茨の道を選択。その作業の大変さが想像できるだけに、良くやった!すげえなケンさん!というのが素直な感想です。

その音はカントリーからAOR、そしてR&Rやシューゲイザーまで入り乱れ、音響派の感覚を感じさせながらポップに着地する百花繚乱ポップ。でもプロダクションの基本はその声の良さが中心で、その声にぴったり合ったジェントルなメロディーが貫かれてるからこそチグハグにはならない。、逆に音楽マニアの心をくすぐる部分がたくさんあるなぁーって印象になってます。一番近く感じるのはアコギと歌のイメージからキングス・オブ・コンビニエンスかなぁ。福山のことはまったくわからないのだけど、勝手にケンさんの声からノルウェーを思い浮かべている俺がいます。

ただここまでの音を聞くと思うのは、この声とメロディーにはリッチな環境のレコーディングが合うよなぁーということ。ケンさんのミックスもアーティストミックスな感じでなく、きっちり良い音に照準が絞れてるので、とても心地よいのだけど、もっとすげえスタジオで、すげえマイク使って、すげえエンジニアで溝渕ケンイチロウの音を聴いてみたいなぁ。声とアコギがとてもリッチなのが特徴だと思うので、そんなことも感じてしまう俺がいます。まあそれはあくまで欲を言えばの話ですけどね。

友達だと言うことを排除しても、良質なポップミュージックがまた一枚生まれましたと言うのが正確な情報でしょう。日曜日の朝にも、真夜中のヘッドフォンにもぴったりな不思議なポップです。