「教団X」/中村文則


久しぶりに小説のレビュー。

ピースの又吉やら西加奈子やら人気作家も大絶賛の小説がこの教団X。基本中村文則さんの小説は暗いので、なかなか読み始める時に覚悟がいるのですが、この小説は暗いながらもそれを超える力強さがあって、グイグイ引き込まれます。

僕が凄いと思える小説って2種類あります。一つは夢の中のような、この世界と切り離された世界を描きながら、どこかで現実と繋がる小説。こちらはある意味作家の頭の中だけで完結する世界。僕の中では村上春樹とかはこちら側。大事なのは空気感と文体の上手さ。日常を描いてるのに夢の中みたいな感覚になる小説。

そしてもう一つは怖いくらいのリアリティがあって、そのバックグラウンドも緻密に調べられている、緻密な取材力と豊富な知識、そしてそれを構築する力が必要な小説。現実には出会わないような世界を描いていても、すぐそこにあるようなリアリティを感じる小説。こちらの代表は村上龍だと思うのですが、教団Xもこちら側なのかな。

そして実はこの小説もそうですが、そんな小説は、どこかグロくて暗い世界を描きながら、最終的にはどこかポジティブな印象を残します。闇を照らしながら最終的に描くのは光。この小説も悪を徹底的に照らしながら、その裏側にある善にも触れて行く。まあそれがどちらに振れるかわからない怖さを描いてるんだけど、その最終決断は読み手のポジティブさに賭けている。とても潔い。最終的には読み手を信じてる小説家な気がします。

中村文則さんは全部読んでみようかなぁ?と思える数少ない小説家。まだまだ読んでない作品があるので楽しみです。まあ受け止めるのに体力がいる作品ばかりですが・・・。