ずっと逆転満塁ホームランを狙って大振りを続けている。当たるはずないだろ?と指差して笑う人の姿は見ない事にして、まだ振り続けている。嘲笑うような笑い声も、気合いの声で何とか掻き消す。そしてまたバットを振る。しかも小ヒットとか、振り逃げとか、フォアボール狙いなんて絶対にしない。いつも狙うのは逆転満塁ホームラン。
しかしながらこれだけ全力の空振りを繰り返すと、手首から足首、首、腰、胃腸、大腸、肝臓、視力、体力、時の運、全てにガタが来て、ニューヨークに行きたくなってしまう。あ、ダメだ。ニューヨークは、ウルトラクイズは関係ない。特にやられるのは精神の奥の方。なんとかバランスを保って来ているけれど、なかなかにしんどくなって来た。
まあそれでもこんな事を書いてバランスも取るし、泣き言も言うし、ちゃんと寝るし、お風呂も入るし、髪も洗うし、マッサージするし、育毛剤も付けるし、毛が生えるし、酒も飲む。夜に天一だって食べちゃう。胃がもたれて、心も胸焼けしてるけれど、それでもまだバットは握れている。
焦りの季節がまたやって来た気がする。焦ってもしょうがないし、やるべき事をやったら後は結果を待つしかない。そして粛々とまた次のやるべき事をやらなきゃいけない。結局やる事、やれる事はそれだけ。それでも胸のザワザワがいちいち存在を主張するから面倒臭い。ザワザワごと引きちぎって投げ捨ててやりたいけれど、それをやったら命はない。まだ死ねないから、そのままにしている。
そしてまたバットを握り、次の打席に立つ。相手のピッチャーの姿は見えてもいない。そして今日もフルスイングの音をさせ、バットは空を切っている。