「All is Calm,All is Bright/H i-5」


遂にリリースのH i-5のニューアルバム。この機械仕掛けのパンドサウンドがなぜこんなに有機的なのか。このおじさん3人がセッションで作り出すメロディーがどうしてこんなに青いのか。こんなどこにでもいそうな気の良い3人が作る音楽がどうしてこんなに普遍的なのか。

大学時代から変わらぬ友情で結ばれた3人が、それぞれ紆余曲折ありながらも音楽をまっすぐ見つめ続け、今も全く変わらないフレッシュな気持ちで同じように3人でバンドをやってる。これって実はものすごいことだからね。バンドの活動期間の長さでいったらもっと長い期間のバンドも勿論あるだろうけど、気持ちの変わらなさ、新鮮さはギネス級だと思う。そしてまた新しいアルバムで最高到達点を超えるって、これは奇跡でしょ。

タケダ君の持つ根源的な青さを守る為に、オダ君とテッペイやんは腕を磨いて鉄壁のアンサンブルを作ってきた。それぞれが他の現場で使命をされるくらい腕を上げたことで、新しい地平が見えてきた気がします。

まあでも、それでもこのバンドの真骨頂はライブ。一回も見たことない人は見て欲しいなあ。所謂打ち込みのバンドとは全く違う音だから。ルックスに派手さはないですが(苦笑)音楽は輝いてますよ。誰が見たってわかるくらい凄いんだから。

今度の日曜には下北251でリリースパーティーだそうです。しかもハイフラ、マドラスホンダレディが一緒だってよ。よだれだらだらなライブ。俺は行くぞ。

「Ti Amo/Phoenix」


今やフランスを代表するバンド、フェニックスの新作。

とにかく気持ち良ければ良いだろ?っていう軟派なスタイルが持ち味で、いつもスウィートな甘ったるいメロディーをその時々に旬なサウンドに乗せてくる。まあ毎回毎回スタイリッシュ。でも前作は少し頭でっかちというか、考え過ぎじゃね?というところがあった。そして今回は軟派で軽薄なスタイルに舞い戻ってて、心地よさ最優先。ここが気持ち良いんでしょ?と呟くジゴロのようなくすぐり具合です。

いやあフェニックスはこうじゃなきゃなぁ。この10年僕のフェイバリット10に入り続ける大好きなバンドです。

「Hot Thoughts」/Spoon


アメリカインディー界の良心、スプーンのニューアルバム。
デスキャブ、モデストマウス、ディアハンター、ナショナル、シンズといったバンドによって攻勢を極めたアメリカインディーバンドシーンは今も活発に動いてますが、チャート的なところでは難しい時代に突入してます。このスプーンの新作のチャートアクションも厳しかったらしい。

でも、それでこのアルバムの出来が悪いかといったらそんなことはなし!今回もスプーン印の実験的な音響の世界。ドラムの音とかめちゃくちゃ特徴的だし、その定位のさせ方は他では聴けない。全ての音がどこかささくれ立っていて、迫力のある音が組織立ってこちらに向かってくる。でも流れるメロディーはどこか優しく、懐かしい感じで、実験的な音楽に有りがちなとっつきにくさは全然ない。そして今回は絶妙なファンクネスもあり、同時代の音への目配せも隠し味的にあって飽きさせない。

これは音楽愛なんだと思う。この人達は愚直に音楽を信じてる。そこがとても清々しく、まっすぐ響いてくる原因だと思う。まあ音楽愛だけで立ち回れるような世界ではないんだろうけど、こんなバンドがあっても良いと思う。このバンドには生き残って欲しい。こんなバンドが生き残れないなら、ポップミュージックは死んだんだと思う。スプーンはいつも裏切らない。絶対。いつだって信頼出来るバンドだから。

「DAMAGE AND JOY」/JESUS & MARY CHAIN

ジザメリの新譜がまた聴ける時が来るなんて!19年振りですよ。前は90年代かい。

しかし何も変わらないように見えるジザメリですが、ちゃんも進化もしております。確かに曲はいつだって甘美なトロトロメロディーですが、サウンドは初期のスピーカーぶっ壊れた感じから、ハニーズデッド期のダンスアプローチ、その次のアコースティック、そして休止前はある意味王道のロックンロールと変化してきました。今回は全てを踏
まえた感じで、さらにストリングスやオルガンが入ったりと、ここでも進化を見せてます。

ただ今回の進化は今までと違い、デジタルの録音環境でジザメリサウンドをどう響かせるか試行錯誤した結果のように思います。音と音を滲ませるのが彼らの流儀なのに、今回はとても分離が良い。でも聴こえて来るのはジザメリ印に聴こえるから、この試みは成功じゃないかな?アコースティックアルバムを作った時ととても違い気がします。

クリエイションのおっさんに愛される女、スカイフェレイラも参加。過激なジザメリが好きな人にはどう聴こえるのかはわからないけど、僕はとても好きです。いやしかしいつも必殺のメロディーだよなあ。自分のルーツの1つなことは間違いない。

「Stranger to stranger」/PAUL SIMON


サイモン&ガーファンクル時代から芳醇な音楽、音作りの人でしたが、ソロになってからのポールサイモンの音楽的な探究心にはさらに頭が下がります。それはこの昨年発表した最新アルバムでも顕著でした。

もう完全におじいちゃんのポールサイモンが、さらにおじいちゃんのロイハリーを共同プロデュースに担ぎ出し、作り出したのは名作「グレイスランド」をアップデートさせたようなリズミックな傑作!おじいちゃん同士、昔を懐かしむような作品かと思ったらとんでもない!レディオヘッドやらのレフトフィールドへはみ出していくミュージシャンの作品と比べたってもっとスリリングで、エッジが立ちまくりの鳥肌ものの作品。

中でも特筆はイタリアのストレンジ極まりないリズムミュージックを作るクラップ!クラップ!を起用してるところ。この全く衰えてない嗅覚には恐れ入る。自分が試聴した音楽の中でも、おっ!と思えるものをおじいちゃんがチョイスしてくる驚き。しかもそのサウンドを完全に我が物にしてる。まあクラップ!クラップ!自体が「グレイスランド」の末裔みたいなものなんですけどね。

まあとにかくチャレンジングでありながらきっちりポップに着地してるところが素晴らしい。ポールサイモンの音楽がつまらなかったことなんて一度もない。ティーンが聴くには高尚すぎる気もするするけれど。昨年のナンバーワンはこれにするべきだった。後悔。

「Salutations」/Conor Oberst


ブライトアイズのコナーオバーストの新作。元々はローファイの世界にいた人ですが、キャリアを重ねるごとにオーソドックスな音にはなって、最近はルーツ志向が顕著な音に。でも正直ブライトアイズ名義からソロ名義になって、何か零れ落ちたものがあるのかなぁ?と思ってました。

しかし、この新作でやっとバランスがぴったりに合った気がします。元々歌声がエキセントリックなので、十分パンチはあるんですが、その声に負けないメロディーとアレンジで、しかも真正面からの美しいアレンジでバランス取れたのが素晴らしい。どうしてもこの声だと奇抜に行きたくなるよね。ついに達成した普遍性がありながら、刺さる音楽。今年のベストアルバム候補ですな。またライブ見たいな。

「Magic Christian Music」/Bad Finger


これをパワーポップの原型と言ってよいのかな?バッドフィンガーの名盤。

ポールが曲を書いて、アップルからリリースしてることもあり、ビートルズの弟分とされてるし、確かにビートルズ色はあるけれど、どっちかと言えばポールの弟分だよね。この音楽。ジョンやジョージの色は少な目。

でも純粋にあのポール印の綺麗なメロディーを追っているので、とても潔い。グッドメロディーのグッドミュージックに絞って音楽を作っているのが良くわかる。前衛的とかそんなところに目が行ってない。そこに彼らの良さがある。まあこの当時はこれで十分前衛だったのかもしれないけど。

良い音楽、しかも大衆的な音楽を追い求めると、結局メロディーにたどり着く。それをコツコツとやり続けたバンドとして評価したい。ほとんど報われなかったし、結局は不幸な結末を迎えるバンドなんけど、音楽には曇りなし。休日の昼下がりにランチしながら聞きたい音楽。