2011年エガワヒロシ的ベストアルバム!

2012年にもすっかり慣れ始めた昨今ですが、2011年のベストアルバムを発表してなかった!ちょっと今年は小粒かなぁ。ベテランの底力が見えたというか、自分が保守化して大人の音楽しか聞けなくなったというか、どちらにしろそれほど熱狂的な音楽との出会いはなかったですね。でもでもいい音楽はたくさんあるんです。今年書いたレビューも引用しながらベストアルバム発表!

1位

「The Whole Love」/Wilco
REMなき今最も信頼できるアメリカンバンド、ウィルコの新作。「Yankee Hotel Foxtrot」で高みに達したウィルコが、その後実験に走ったアルバムと、メロディーに走ったアルバムを出し、最終的にそのどれでもある音楽に戻ってきたのがこのアルバム。まあウィルコはいつもアートとポップの間をどっしりと進み、必ず僕らを満足させてくれる。音楽のヒリヒリした部分と、とても柔らかい部分を同時に見せてくれるバンドはそういない。どっちかならたくさんいるけどね。前回の来日公演も感動したなぁ。いやしかしあれだけ素晴らしいアルバムを出して、また傑作を出すなんて!脱帽です。 【10/23レビューより】

2位

「Parallax」/Atlas Sound
ディアハンターのブラッドフォードのソロ3作目。今回のはノイズがどうこうという作品ではなく、ディアハンターと地続きの暗黒のオルタナロカビリーというか、乾いてるのにぬれている独特のサウンドでメロディアスな音楽を奏でている。ポップなメロディーを奏でても絶対にヒリヒリするのがこの人の特徴。闇を見続けて、でもその先に光を求めることもやめてないから、ただ暗い音楽にならないんだろうなぁ。余計こういう音楽には希望を感じる。希望っていい言葉だと思うんだ。どこの地点にいる人にも掴むことができる光。音楽で光が見せられたらいいよね。
【1/15レビューより】

3位

「ファックミー」/前野健太
フォークシンガーというのは、自分の半径3メートルの世界を歌う。そこには圧倒的なリアリティがあり、それによって曲に力が生まれる。しかし優れたフォークシンガーと凡庸なフォークシンガーの違いはその3メートルを歌っているのに、時代の流れやら、空気やらを言い当ててしまうこと。前野健太はまさにそんなアーティスト。時代のささくれ具合がこんなにうまく出てる音楽はないなぁ。しかもささくれようとしてるわけじゃなくて、どこかに匂う。そう匂いってすごく大事。匂いまで表現できるのが本当に豊かなアーティスト。前野健太はその一人。悔しいけど名盤だと思う。
【2/6レビューより】

4位

「GIMME SOME」/PETER BJORN AND JOHN
ピータービョーン&ジョンの最新アルバム。僕はこのバンド本当に好きでねぇ。でも有名な口笛ソングはそんなに好きじゃなく。あの曲がイメージする軟い北欧ポップとは全然違うのがこのバンドの本当の顔。プログレッシブながらポップで、ニューウェーブなR&Rを奏でる本当のオルタナティブバンド。実験的で刺激的なサウンドをポップに着地させることにかけては今のバンドの中で最高峰じゃないかなぁ。みんなこのバンドをなめちゃだめだよ。本当にヒリヒリする、刺激たっぷりのポップを味わうならこのバンドだよ。そしてこのアルバムはそのヒリヒリ感が今までで一番味わえる気がします。
【4/3レビューより】

5位

「WELCOME TO CONDALE」/SUMMER CAMP
レトロフューチャーな感覚の近未来レトロポップを奏でる男女ユニット。チルウェイブなバンドだと思っていたら英国ポップの伝統も踏まえながら、R&Rも感じさせるサウンドでよりバンド感のあるアルバムがとても意外だったなぁ。しかしパルプのスティーブ・マッキープロデュースということで妙に納得。この微妙なゆるさがたまらん。俺チルウェイブではこのバンドが一番好き。ウォッシュアウトよりも、トロイモアよりも。
【書き下ろし】

6位

「Suck It And See」/Arctic Monkeys
アークティックモンキーズを新世代の代表的なR&Rバンドだとは思ってなかった。ストロークスに関してはすぐにこれは特別なバンドだ!と思ったけれど、その後のアルバムを聴く限り、あれは最初の大当たりだったんだなぁーと今は思っている。ところがこに猿達の場合、詩が特筆されるところなので日本人にはわかり難いというのはあるけれど、2枚目も同じくらい素晴らしいアルバムを作り、3枚目では新境地をしっかり見せ、この4枚目のアルバムでは前作の冒険をしっかり果実に実らせて、更にメロディーの充実という着実且つ大幅な進歩を見せてくれている。今回のアルバムは大傑作だと思う。メロディーを充実させながらR&Rのエッジを失わないなんて。これはもう最初の僕の判断は見る目の無さゆえと言わざるを得ない。脱帽。いやしかしこの人たちのギターの音が大好きです。この歪みすぎず、ギターそのものが聞こえるような音。素晴らしい。最近の若者の暑苦しい音が大嫌いなんで。
【6/26レビューより】

7位

「HELPLESSNESS BLUSE」/FLEET FOXES
音楽で桃源郷を見せてくれる、ロマンティックなまでアナログで豊かな音像を追求するバンド、フリートフォクシーズの2枚目。今のサイケデリックでいてアメリカーナな音のトレンドを何年も先取りしてたのはこの人たちだったね。ただあまりの完成度で誰もついて行けない。これで若い人のバンドっていうのが信じられん。まったくもって期待を裏切らない。ちょっと鬼気迫るものがある桃源郷ってところがシニカルなパラドックスだね。
【書き下ろし】

8位

「THE PEOPLE'S KEY」/BRIGHT EYES
今やアメリカを代表するシンガーソングライターとなったコナーオバースト率いるブライトアイズのニューアルバム。やっぱりこの人はブライトアイズ名義で作るアルバムが一番良い!ブライトアイズって冷たさと熱が同居している稀有な曲を作る人だと僕は評価していて。今回のアルバムは特にひんやりとした感覚が強いかな。でもその奥に何か熱いものも感じる。決して派手なアルバムじゃないし、インディー臭さというか、オルタナ感は減って、真っ当なサウンドが強くなってきたので、音楽マニアの中では評価が分かれると思うけど、僕はこの地に足のついたアルバムがとても好きです。歩みを止めることなく、歩き続ける意思を示した好盤。
【3/6レビュー】

9位

「HOW DO YOU DO?」/Mayer Hawthorne
元々ヒップホップDJだったオタク風の男が、急に生音中心のソウルフルなポップミュージックを作り出し、大きな話題になっているシンガーソングライター。ジェイミーリデルにも近い感じですが、向こうはマッドサイエンティストがポップにはじけて!って感だけど、この人はもっとまっとうにポップ。ホール&オーツとか好きだったらたまんないんじゃないかなぁ?
【1/8レビュー】

10位

「COLLAPSE INTO NOW」/REM
今年残念ながら解散してしまったREMのラストアルバム。こんな瑞々しくてある意味ちょっと荒くて勢いのあるアルバムを作っておいて解散というのはビックリ。ただ今回のアルバムは前作の延長線上にあるから、やっぱりバンドとして終わりが見えたのかもしれないね。でも最後までREMはかっこいい音楽しか作らなかった。信頼に足る音楽しか作らなかった。そこがとてもうれしい。マイケルスタイプはけっこう僕のロールモデルだからね。実は。うちのギターの田村君にも言われます。
【書き下ろし】

とこんな10枚をセレクト。ほかにもベテランがレッチリ、CAKE、エルボー、ファウンテインズといいアルバム出してましたね。あとはベックプロデュースのサーストン・ムーアソロも良かった。新しいのはあんまりなくて、TUNE YARDSくらいかなぁ。まあ世間的にはジェイムス・ブレイクとボン・イエールの年なんだろうね。まあかっこいいのはわかるけどそこまでははまらなかったな。最近子供の歌ばっかり聞いてるから、わかりやすくメロディーのある音楽ばかり選んでる気がします。ついに音楽の趣味もおじさんになってきました・・・。ミュージックマガジンがしっくりくるようになってきたし・・・。

とこんな音楽を聴いている僕がどんな音楽を奏でるかはこのライブで!

1月26日(木)
高円寺HIGH
エガワヒロシPRESENTSフワリカ!!PART21
〜SINGER SONG-WRITER NOW!!2012〜
前売り2500円 当日3000円
OPEN 18:30 START 19:00
出演:エガワヒロシ/小林建樹/大塚利恵/mimlus

チケット予約はe−PLUS、またはegawahiroshi@nifty.comまで!