「Magic Christian Music」/Bad Finger


これをパワーポップの原型と言ってよいのかな?バッドフィンガーの名盤。

ポールが曲を書いて、アップルからリリースしてることもあり、ビートルズの弟分とされてるし、確かにビートルズ色はあるけれど、どっちかと言えばポールの弟分だよね。この音楽。ジョンやジョージの色は少な目。

でも純粋にあのポール印の綺麗なメロディーを追っているので、とても潔い。グッドメロディーのグッドミュージックに絞って音楽を作っているのが良くわかる。前衛的とかそんなところに目が行ってない。そこに彼らの良さがある。まあこの当時はこれで十分前衛だったのかもしれないけど。

良い音楽、しかも大衆的な音楽を追い求めると、結局メロディーにたどり着く。それをコツコツとやり続けたバンドとして評価したい。ほとんど報われなかったし、結局は不幸な結末を迎えるバンドなんけど、音楽には曇りなし。休日の昼下がりにランチしながら聞きたい音楽。

「パブロの恋人」/小島麻由美


好きな日本の女性シンガーソングライターと言われて思い浮かぶのは、チャラさんや平岡恵子さん、湯川潮音さん、伊藤サチコちゃんとか色々いますが、その中で特別な位置を占めるのがこの小島麻由美さん。

この人の音楽の魅力を説明するのは難しい。キャバレー感とか、ジャジーなところとか、フレンチ感とか音楽の良さは色々あるんだけど、結局は声。というか吐息と声が裏返る瞬間。これに尽きる。あの瞬間、男の真ん中的な場所を射抜かれる感じ、それをどう表現したら良いのだろう?とにかくキュートなのにストレンジで、謎の存在感。たまらんのですよ。

その中でもこのアルバムは気だるさと弾けるキュート感のバランスが絶妙で。これ以上のバランスは思いつかない。少女と老婆が一緒に襲ってくるような、全世代の男を骨抜きにするアルバム。最高でしょ。まあ嫁と小島麻由美どっちかを選べと言われたら、躊躇なく嫁を選ぶわけですけど。

「その辺の問題」/中島らも、いしいしんじ


今日は音楽でも小説でもなく、対談集。中島らもさんといしいしんじさんの対談。

いしいさんの「ブランコ乗り」「麦踏みクーツェ」「トリツカレ男」の三冊を読んで完全にいしいしんじ文学のトリコになっていました。そしてどんな人か知りたくてブログを見に行くと、なんともあっさりとした文章で。そっけないくらいのイメージ。小説の文体と、このあっさりとしたイメージで、僕にとってのいしいさんは、清らかで、エコロジカルな、ホンワカで静かな人というイメージでした。そして本屋さんでこの本を見つけます。中島らもさんというと「バンドオブザナイト」で見られたアウトロー極まりない、ドラッギーとロックンロールと不条理の塊のような、とにかく危険な匂いしかしない人というイメージ。ドリーミーないしいさんの対談?と頭にはてなマークが乱立していました。でも気になって手に取り、そのまま購入。家に帰ってページをめくると…。

完全なる変態です!(笑)獣姦の話からドラッグの話、まあとにかくタブーからタブーへの綱渡りの連続、僕が考えてたいしいしんじさんはそこには一欠片もいませんでした。らもさんはイメージ通りですけど、いしいさんはらもさんを超えるアナーキーな人かもしれない…そんな風に思えるくらい強烈な人がそこにいました。

作品と人は別だと言います。ノイズの人が大人しかったり、爽やかなポップスを奏でる人が極悪だったりと、音楽の世界でもそういうのはありますけど、小説にもこんなギャップがあるとは…。小説家恐るべし。

これを読んだ後にもう一度いしいしんじ文学を読み返したらどう思うんだろう?あのドリーミーな世界を受け取られるだろうか?今はそんな怖いような楽しみなようかな、なんとも不思議な興味でいっぱいです。まだ「双子のプラネタリウム」読んでないのに。中島らもさんの「ガタラの豚」も読まなきゃ。

「Ritual De Lo Habitual」/Jane's Addiction

90年代の音楽にどっぷり浸かった僕ですが、あの時代の面白いところは、CDの再発ブームで、とにかく色んな時代や色んな種類の音楽が並列に並びだして、まさにごった煮の音楽が溢れまくったこと。そしてその中でも一番わけのわからんものだなぁーと思ったのだこのジェーンズアディクション

この時期、ミクスチャーというカテゴリーに入れられてましたけど、あれはハードロック×ファンクがその王道でした。でもこのバンドはそこまでファンク感はないし、ギターは歪んでるけどそこまでハードロックでもない、サイケ感が強いけど、そういうバンドの影みたいなものもなくて。とにかく後にも先にもジェーンズアディクションはジェーンズアディクションでしかなかった。真似してるバンドも見当たらない。そしてポップ。これも重要だね。

アートの感覚で音楽を作るとこうなるんですかね?今でもこのバンドのファミリーツリーみたいなものも想像できないし、本当にコロンブスの卵のような音楽。そこが僕が一番評価できるところ。オリジナルであるということは、特別高く評価したいな。今聴いてもかっこいいよ。古くなってない。大好き。

「BEAT EMOTION」/BOOWY

最近作家仕事のイメージ作りのために久しぶりにボウイを聴いた。初めて出会ったボウイはこのアルバムだし、コピーした曲もたくさんあるから、だいたいわかってるつもりだったけど、今聴くととても新鮮で。

布袋さんのギターがとにかくキレキレ。かなりエフェクト頼りの人工的なサウンドなんだけど、そのプラスティックな感じも狙いなんだと思う。そしてアレンジの手本のような絶妙なシンプルさでサウンドが形造られてる。8ビートの印象が強いけどそれだけじゃなく、リズムもとても豊富。しかもとびきりポップ。これは名盤だわ。

80年代ブームも下火になった感あるけど、この感じはまだ来てない気がします。負けない曲書くべ。リスペクトを込めて。

「Songs From The Big Chair」/Tears For Fears

最初に影響を受けて、しかも今でも大好きでむしろどんどんさらに好きになってるアルバムがこちら。ティアーズフォーフィアーズの2枚目。

「SHOUT」ではじまる世界観にまずノックアウト。重厚で、でもどこかロマンティックで。そしてルールザワールドではちょっとほっとするような可愛らしさも見せ、そして一番好きな曲が「MOTHERS TALK」。このスリリングなサウンド!だいたい最初に好きになったものって、今聴くとちょっと甘酸っぱくて、恥ずかしさと共にある感じなんだけど、このアルバムに関しては一度も恥ずかしいなぁーって感覚がない。繊細そうな思春期のイメージをスケールのでかいサウンドに乗せたのが成功した要因かな。いつまでも自慢の初めてのアルバムです。

「Casanova」/The Divine Comedy


英国音楽の良さというのは、アメリカのような土着の音楽というよりも、どこかから持ってきた音楽を加工して、磨き上げて、さらには別のものも足してオリジナルにするところ。しかもそれを品良くポップに仕上げるのに真骨頂がある。それはビートルズを筆頭にした伝統のように感じます。

そしてそんな英国紳士の代表格がこのディヴァインコメディ。古き良きビッグバンド的なサウンドに現代的なサウンドを潜り込ませ、ゴージャスなダンディズムの世界を描き出す。しかも変にアンダーグラウンドや趣味性に浸ることもなく、まあサービス精神の塊で、とにかく心地よい音楽を追及。この伊達男ぶりには淑女も達もたまらんわけですな。
モテたい男子はディヴァインコメディを聴けばいい。そこにヒントはあるはず!しかもちょっとハゲてきてるところのシンパシー。笑