「DAMAGE AND JOY」/JESUS & MARY CHAIN

ジザメリの新譜がまた聴ける時が来るなんて!19年振りですよ。前は90年代かい。

しかし何も変わらないように見えるジザメリですが、ちゃんも進化もしております。確かに曲はいつだって甘美なトロトロメロディーですが、サウンドは初期のスピーカーぶっ壊れた感じから、ハニーズデッド期のダンスアプローチ、その次のアコースティック、そして休止前はある意味王道のロックンロールと変化してきました。今回は全てを踏
まえた感じで、さらにストリングスやオルガンが入ったりと、ここでも進化を見せてます。

ただ今回の進化は今までと違い、デジタルの録音環境でジザメリサウンドをどう響かせるか試行錯誤した結果のように思います。音と音を滲ませるのが彼らの流儀なのに、今回はとても分離が良い。でも聴こえて来るのはジザメリ印に聴こえるから、この試みは成功じゃないかな?アコースティックアルバムを作った時ととても違い気がします。

クリエイションのおっさんに愛される女、スカイフェレイラも参加。過激なジザメリが好きな人にはどう聴こえるのかはわからないけど、僕はとても好きです。いやしかしいつも必殺のメロディーだよなあ。自分のルーツの1つなことは間違いない。

「Stranger to stranger」/PAUL SIMON


サイモン&ガーファンクル時代から芳醇な音楽、音作りの人でしたが、ソロになってからのポールサイモンの音楽的な探究心にはさらに頭が下がります。それはこの昨年発表した最新アルバムでも顕著でした。

もう完全におじいちゃんのポールサイモンが、さらにおじいちゃんのロイハリーを共同プロデュースに担ぎ出し、作り出したのは名作「グレイスランド」をアップデートさせたようなリズミックな傑作!おじいちゃん同士、昔を懐かしむような作品かと思ったらとんでもない!レディオヘッドやらのレフトフィールドへはみ出していくミュージシャンの作品と比べたってもっとスリリングで、エッジが立ちまくりの鳥肌ものの作品。

中でも特筆はイタリアのストレンジ極まりないリズムミュージックを作るクラップ!クラップ!を起用してるところ。この全く衰えてない嗅覚には恐れ入る。自分が試聴した音楽の中でも、おっ!と思えるものをおじいちゃんがチョイスしてくる驚き。しかもそのサウンドを完全に我が物にしてる。まあクラップ!クラップ!自体が「グレイスランド」の末裔みたいなものなんですけどね。

まあとにかくチャレンジングでありながらきっちりポップに着地してるところが素晴らしい。ポールサイモンの音楽がつまらなかったことなんて一度もない。ティーンが聴くには高尚すぎる気もするするけれど。昨年のナンバーワンはこれにするべきだった。後悔。

「Salutations」/Conor Oberst


ブライトアイズのコナーオバーストの新作。元々はローファイの世界にいた人ですが、キャリアを重ねるごとにオーソドックスな音にはなって、最近はルーツ志向が顕著な音に。でも正直ブライトアイズ名義からソロ名義になって、何か零れ落ちたものがあるのかなぁ?と思ってました。

しかし、この新作でやっとバランスがぴったりに合った気がします。元々歌声がエキセントリックなので、十分パンチはあるんですが、その声に負けないメロディーとアレンジで、しかも真正面からの美しいアレンジでバランス取れたのが素晴らしい。どうしてもこの声だと奇抜に行きたくなるよね。ついに達成した普遍性がありながら、刺さる音楽。今年のベストアルバム候補ですな。またライブ見たいな。

「Magic Christian Music」/Bad Finger


これをパワーポップの原型と言ってよいのかな?バッドフィンガーの名盤。

ポールが曲を書いて、アップルからリリースしてることもあり、ビートルズの弟分とされてるし、確かにビートルズ色はあるけれど、どっちかと言えばポールの弟分だよね。この音楽。ジョンやジョージの色は少な目。

でも純粋にあのポール印の綺麗なメロディーを追っているので、とても潔い。グッドメロディーのグッドミュージックに絞って音楽を作っているのが良くわかる。前衛的とかそんなところに目が行ってない。そこに彼らの良さがある。まあこの当時はこれで十分前衛だったのかもしれないけど。

良い音楽、しかも大衆的な音楽を追い求めると、結局メロディーにたどり着く。それをコツコツとやり続けたバンドとして評価したい。ほとんど報われなかったし、結局は不幸な結末を迎えるバンドなんけど、音楽には曇りなし。休日の昼下がりにランチしながら聞きたい音楽。

「パブロの恋人」/小島麻由美


好きな日本の女性シンガーソングライターと言われて思い浮かぶのは、チャラさんや平岡恵子さん、湯川潮音さん、伊藤サチコちゃんとか色々いますが、その中で特別な位置を占めるのがこの小島麻由美さん。

この人の音楽の魅力を説明するのは難しい。キャバレー感とか、ジャジーなところとか、フレンチ感とか音楽の良さは色々あるんだけど、結局は声。というか吐息と声が裏返る瞬間。これに尽きる。あの瞬間、男の真ん中的な場所を射抜かれる感じ、それをどう表現したら良いのだろう?とにかくキュートなのにストレンジで、謎の存在感。たまらんのですよ。

その中でもこのアルバムは気だるさと弾けるキュート感のバランスが絶妙で。これ以上のバランスは思いつかない。少女と老婆が一緒に襲ってくるような、全世代の男を骨抜きにするアルバム。最高でしょ。まあ嫁と小島麻由美どっちかを選べと言われたら、躊躇なく嫁を選ぶわけですけど。

「その辺の問題」/中島らも、いしいしんじ


今日は音楽でも小説でもなく、対談集。中島らもさんといしいしんじさんの対談。

いしいさんの「ブランコ乗り」「麦踏みクーツェ」「トリツカレ男」の三冊を読んで完全にいしいしんじ文学のトリコになっていました。そしてどんな人か知りたくてブログを見に行くと、なんともあっさりとした文章で。そっけないくらいのイメージ。小説の文体と、このあっさりとしたイメージで、僕にとってのいしいさんは、清らかで、エコロジカルな、ホンワカで静かな人というイメージでした。そして本屋さんでこの本を見つけます。中島らもさんというと「バンドオブザナイト」で見られたアウトロー極まりない、ドラッギーとロックンロールと不条理の塊のような、とにかく危険な匂いしかしない人というイメージ。ドリーミーないしいさんの対談?と頭にはてなマークが乱立していました。でも気になって手に取り、そのまま購入。家に帰ってページをめくると…。

完全なる変態です!(笑)獣姦の話からドラッグの話、まあとにかくタブーからタブーへの綱渡りの連続、僕が考えてたいしいしんじさんはそこには一欠片もいませんでした。らもさんはイメージ通りですけど、いしいさんはらもさんを超えるアナーキーな人かもしれない…そんな風に思えるくらい強烈な人がそこにいました。

作品と人は別だと言います。ノイズの人が大人しかったり、爽やかなポップスを奏でる人が極悪だったりと、音楽の世界でもそういうのはありますけど、小説にもこんなギャップがあるとは…。小説家恐るべし。

これを読んだ後にもう一度いしいしんじ文学を読み返したらどう思うんだろう?あのドリーミーな世界を受け取られるだろうか?今はそんな怖いような楽しみなようかな、なんとも不思議な興味でいっぱいです。まだ「双子のプラネタリウム」読んでないのに。中島らもさんの「ガタラの豚」も読まなきゃ。

「Ritual De Lo Habitual」/Jane's Addiction

90年代の音楽にどっぷり浸かった僕ですが、あの時代の面白いところは、CDの再発ブームで、とにかく色んな時代や色んな種類の音楽が並列に並びだして、まさにごった煮の音楽が溢れまくったこと。そしてその中でも一番わけのわからんものだなぁーと思ったのだこのジェーンズアディクション

この時期、ミクスチャーというカテゴリーに入れられてましたけど、あれはハードロック×ファンクがその王道でした。でもこのバンドはそこまでファンク感はないし、ギターは歪んでるけどそこまでハードロックでもない、サイケ感が強いけど、そういうバンドの影みたいなものもなくて。とにかく後にも先にもジェーンズアディクションはジェーンズアディクションでしかなかった。真似してるバンドも見当たらない。そしてポップ。これも重要だね。

アートの感覚で音楽を作るとこうなるんですかね?今でもこのバンドのファミリーツリーみたいなものも想像できないし、本当にコロンブスの卵のような音楽。そこが僕が一番評価できるところ。オリジナルであるということは、特別高く評価したいな。今聴いてもかっこいいよ。古くなってない。大好き。